クロアチアの経済・後編~産業構造~

クロアチアの経済事情の続きです。ここでは前回よりミクロな視点から、国内の産業構造について述べていきます。

データの出典は載せるようにしていますが、時々筆者の分析や感想が挿入されますので、「データだけ見たい」という方は参照先の文献・サイトをあたってみてください。

クロアチアの産業地帯 

クロアチアの経済を支える産業はサービス産業、中でもアドリア海を中心とした観光業ですが、もう少し視野を広げて国全体を見てみると、おもに3つの地域ごとに特色が見えてきます。

それらは、①首都ザグレブを有する中央クロアチア地域 ②ディナル・アルプス地域 ③地中海・アドリア海沿岸地域 です。

(出典:Turizm maps http://www.map-of-croatia.co.uk/)

工場は首都地域に集中 

①は主に西と東に分かれており、西側は国内最大規模の工業地帯(ザグレブ工場地帯)を中心として、主に食品加工業で知られています。首都に近く、工業生産を支える地域と言えます。東側は、スラヴォニアと呼ばれ、東クロアチア工業地帯を中心とした産業地帯を有する一方、伝統的な穀倉地帯としての性格も根強く残っているようです。

スラヴォニア地方、ジャコボの穀倉地帯。

(出典:Wikipedia)

山脈地帯は過疎化 国立公園のための観光ルート有 

②はアルプスの名の通り、面積の多くを山脈にはさまれた地帯です。全国の14%を占める面積にもかかわらず、人口は国全体の約2%にすぎません。過疎化が進んでいるようです。林業・木材加工業が中心的だが、最近ではプリトヴィッツェ湖群国立公園などの自然レジャーを売りとした観光業も盛んになりつつあるようです。

ちなみに、プリトヴィッツェ国立公園はクロアチア唯一のユネスコ世界自然遺産であり(他はすべて文化遺産で、かつアドリア海沿岸地域に集中している)、夏のシーズンにはヨーロッパ中から多くの観光客が訪れます。

HR - Plitvice (Plitvička Jezera)5.JPG

(写真出典:Wikipedia)

筆者も2012年10月末、この公園を訪れましたが、ちょうど紅葉の終わり際でとても神秘的な光景を見ることができました。ザグレブからバスで約2時間、何もない(本当にない)山沿いを走り続けて、その時は観光客も5~6人しかいなかったので、山の真ん中で下された時はどうしようかと思いました。冬も公園は解放されていますが、日が長く観光客もたくさんいる7~8月がベストシーズンでしょう。

IMG_0178

(写真は筆者が撮りました。小道を歩いていたら、急に小雨が止み、太陽が顔を出しました。湖に映る空模様が神秘的です)

「アドリア海の真珠」を擁する観光業の要 

③は、クロアチアの国土を竜に例えた時、ちょうどその尾の部分に来る地域です。イストリアなどを中心とする北部地域と、南部のダルマツィア地域に分かれます。特に南部には古都スプリト、南端ドヴロブニクをはじめ、多くの人がクロアチアと聞いて思い浮かぶような美しい海岸線、おいしい食べ物、そして6つの世界文化遺産を有しています(上述のプリトヴィッツェ湖群国立公園以外のすべてがここに集中)。首都ザグレブを除けば、クロアチア内でもっとも重要な地域であり、観光業を中心に国の収入を支えています。ちなみに、クロアチアを訪れる観光客は、年間約1000万人以上にも上り、そのほとんどがこの地域を訪れます*。まさに「観光業の要」です。

ファイル:Dubrovnik sa Križa.JPG

(出典:どちらもwikipediaより)

筆者はここを訪れた時、カメラをわすれてきていました。。。無念。。。。

*2012年の訪日外国人数は全体で約853万人(出典:日本政府観光局)であり、以下にこの地が外国人観光客に人気かがわかります。

この地は観光業の他、古くから海運、造船業などでも有名だったようです。中でも造船業は国の輸出額の約5%を占めています。現在、海運業はアジアの国々、特に台湾企業や韓国企業が伸びていると言われていますが、クロアチア企業は赤字が続いており、政府の補助金で生き残っている状況のようです。

EU加盟によってこうした補助金による企業の保護は難しくなるため、今後さらに競争が激化するのではないでしょうか。

次回は治安・地雷問題について書こうと思います。お読みくださりありがとうございました。

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